ボクシング界がざわついている。
井上尚弥と中谷潤人──日本が誇る二人の世界王者が、リングで相まみえる可能性がささやかれているからだ。
きっかけは、中谷が「井上を超える」と暗に発言したことに対して、井上が表彰会で対戦要求をした。そこから夢のカードは一気に現実味を帯びてきた。ファンやメディアは期待を口にし、来春の実現を願う声すらある。
だが、一方でこんな思いも頭をよぎる。
「本当に、この試合は必要なのだろうか?」
井上が勝てば「やっぱり最強だ」と言われ、負ければ「衰えた」と叩かれる。
しかも、この発言以降の井上は、どこか精彩を欠く試合が続いているように見える。
中谷が勝っても「国内での潰し合い」と捉えられ、負ければ「まだ早かった」と言われる。
どちらにとっても、称賛と同じだけのリスクを背負う構図だ。
そして何より──もしかしたら実現の前に、井上自身が足元をすくわれてしまうかもしれない。
日本人同士が潰し合うよりも、井上にはジャーボンテイ・デービスのような海外の強豪、Bサイドに回るような試合で世界に挑む姿を見たい。たとえ敗れても、それは歴史に刻まれる挑戦になる。
だからこそ、この一戦が本当に“実現すべき試合”なのか──。
ファンの心は揺れている。

私
ジョーさん、井上 vs 中谷がいよいよ現実味を帯びてきましたね。正直、日本人同士であえて潰し合う必要があるのか、複雑なんです。

ジョー白井
わかるよ。あの二人が拳を交えるなんて、夢のカードに見えるけどな。けど、ファン心理としては“勝っても負けても得しない”試合に映るんだろう。

私
そうなんです。井上が勝てば『やっぱり最強』って言われるだけ。負ければ『衰えた』と叩かれる。しかも、この発言以降の井上は、どこか精彩を欠く試合が続いてるように思えて……もしかしたら実現する前に足元をすくわれるんじゃないかって、そんな不安すら感じるんです。

ジョー白井
なるほどな。確かに、あの発言を境に井上を“衰えた”と見る人も出てきたのは事実だ。中谷の挑発に応えたのも、プライドだけじゃなくて“背負うもの”があるからだろう。

私
ただ、中谷が勝っても『国内での潰し合い』って言われ、負けたら『まだ早かった』と突き放される。どっちにしてもリスクしかない気がして……。

ジョー白井
それがボクシングの残酷さだよ。海外のデービスみたいな大物と戦えば“負けても挑戦”と評価される。だけど国内でやれば“勝って当然、負ければ叩かれる”。二人とも日本の宝だからこそ、余計に難しいカードなんだ。

私
だから、できればこの試合は“永遠に語られる幻のカード”で終わってほしいとすら思います。

ジョー白井
気持ちはわかる。けどな、俺は思うんだ。あの二人が本気でぶつかれば、日本ボクシング史に刻まれる一戦になる。結局、井上が勝つかもしれない。でも、その過程で中谷も間違いなく輝く。そういう試合になるだろう。